ビートたけし

卒論はビートたけしだった。心理学で書くつもりだったが、見てほしい教授がいなくて、主査を鈴木勁介教授にお願いした。アイデアを話しに行くと、畑違いな題材が良かったのか面白がってくれて「タイトルはビートたけしの言語構造、副題は現代日本人はなにを笑っているか」とあっという間に勁介さんが決めた。当然、社会学の方向である。
そのころは自主映画を撮っていたので、「ちっと遅れてます」とたびたびゼミ室に言い訳に行ったのだが、勁介さんは一つも私に関心がないように、いつものように山下先輩の弁当をつまみに(山下、そのウインナを一本くれ)、いつものように湯のみで日本酒を飲んでいた。
卒論は無事通ったのだが、なぜか先生の感想は覚えてない。たいしたことなかったなあと言われて、忘れたのかもしれない。ただ副査を頼んだ文学部の杉本紀子教授には「文学部は引用ばかりで自分の意見がないのが多い。反対にあんたは自分の意見ばかりで、基本文献さえ読んでない」と責められたのだが。
今、ネットで鈴木勁介と検索してみた。2011年に亡くなっていた。葬儀の様子を伝える文章があった。和光大学現代人間学部紀要5号。「鈴木勁介名誉教授をお送りして」岩本陽児。岩本准教授の偲ぶ穏やかな文章によると、棺には日本酒が五、六本も注がれて、先生は酒でびちょびちょになっての出棺となったらしい。ふふふ。良い話しじゃないか。
にほんブログ村 お笑いブログ お笑い芸人へ
にほんブログ村