『渡りの足跡』梨木香歩

梨木香歩『渡りの足跡』(新潮社 2010)読了。
渡り鳥を中心に、鳥と、そして「人間」についてのエッセイ。梨木は初めてまともに読んだのだが(この本についてのいくつかは「考える人」での連載で、つまみ食いしてはいたが)、あらためて感心した。職人が、何十年も大切にしている道具を使うように、手に馴染んだ差し金で、手順を踏まえて、正確に文章を繰り出してくる感じ。小説も端正なのか?そうなんでしょうね。
ヒヨドリについて出てくるのだが、日ごろヒヨドリになじみがある人ならば、まずは章の終わりついている鳥別の注釈のヒヨドリの項を読んで下さい。その文中にこんなのがありますから。
「……頭頂部はぽりぽり掻いたように羽根が立っている。頬の部分にあまり趣味の良くない頬紅のように赤茶けた斑がある」
ふふふ。まさにヒヨドリでしょ。ちょっと不良のあの感じがほどよく描かれてます。

渡りの足跡

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