堺雅人

クヒオ大佐』の陣中見舞いで、当時小学生の次男と一緒に調布の日活撮影所に行った。軍服姿の堺さんに「実はこの子がホンを書いてるんですよ」とあいさつすると、例の笑顔で笑い、うちの子にも丁寧に頭を下げてくれた。それ以来、次男は堺雅人のファンである。
脚本を書くときに、詐欺師関係のノンフィクションをずいぶん読んだ。そのとき感心したアイデアがある。結婚詐欺師。ターゲットの女性が「あなたの家族にご挨拶したい」と言う。詐欺師は一つも慌てず「会ってくれるのかい?僕もうれしいよ」と即答する。だがすぐに「でも会ったら笑うんじゃないかな?」「どうして?どうして笑うの?」「本当に?じゃあ、明日兄貴にキミに会いに行ってもらうことにするね」翌日。彼女のもとに現れる男。だがそれは髪型がちょっと違うだけの、いつもの結婚詐欺師だった。「え?どういうこと?」男は答える。「いつも弟がお世話になっています。双子の兄です」
そういえば、陣中見舞いはちょうど今の時期だった。撮影所の前の桜が見事に咲いていた。春。めでたい春。