安部公房と山口果林

昨日は所用で朝4時50分に起きて、都内へ。9時にいったん用事が済んで、3時までヒマなので、渋谷東急の古書市に行く。藤井書店が例によって「安い、だけど汚い」児童書を持って来てた。いつも本ではないものを買ってしまう(買わされてしまう?)揚羽堂。だが今日は手を出さず。一信堂だったかな。赤瀬川原平の『櫻画報大全』のミニ版(新潮社のカセットブックみたいな感じ)、馬おじさんと泰平小僧のストラップ付きがあった。こんなの知らんかったなあ。欲しくはないが。結局何も買わず会場を出る。まだたっぷり時間があるので代々木のブックオフへ向かう。初めてだったが悪くないじゃん。住まいの図書館の住まい学体系がうじゃらと並んでた。山口果林の『安部公房と私』(講談社 2013)が半額であってうれしい。3時。バスで銀座の町中を走る。
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「どうしてお客さんを小学生限定にしたんですが?」
「30年この商売をやってきて、もううんざりしたの、大人に。自分で言うのもなんだけどウチは銀座の老舗でしょう。接待で使う連中がすごく多い。その会話が聞いてられねえ!媚びたり、いばったり、いじめたり。そうでない連中も来るけどさ、けどそういうヤツはなぜか必ずウンチクを言いやがる。大将、これどこの港で揚がったの?うるせえよ、黙って食えよ」
「それで小学生だけの寿司屋になったわけですね」
「そう、名前もこのさいキッパリ変えた。ランドセル寿司。洒落てるでしょ?」
「一人前どのくらいのお値段で食べられるんですか?」
「小学生は酒を飲まないからね。だから安いよ。5万もあればいい」
「来られる小学生に一言お願いします」
「学校から直接来ないで、一度家に帰ってから来てちょうだい。あと100点取ったらそのテスト持ってきてね。今月はドラえもんのデコキャラシールをプレゼントするよ」
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3カ月後。
「3カ月経ちましたがどうですか」
「やってよかったよ。子供たちが寿司をつまみながら、誕生日にピクミン3買ってもらうんだとか、山ちゃんって安藤が好きなんだぜとか、そういうの聞いてると、こっちまで子供に戻るよ。この前なんて、大将、これすごくおいしいです、どこの港で揚がったんですか?っていう子がいて、なんだよ、うんちくかよ、って思ったら、地図帳を持ってるんで教えて下さいだって。な、いいだろ、小学生は」