宮本茂

「高木は屈強な若者を50人集めろ。篠田は車両と武器の調達を頼む。佐藤はクーラーを28度から27度に下げてくれ」
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漫画家志望のみなさん。
持ちこみに行って「ここ、ちょっと意味わからないんだけど。説明してくれる?」って担当に言われることって多々ありますよね。そのとき答えを一つだけ言うのはダメですよ。二つ以上答えて下さいね。
え?一つしか答えがない?それはまずいですよ。一つしかないのに担当者がわからないのは問題外です。「なぜ主人公はここでこんな顔してるの?」「それは主人公が悲しいからです」「え?これ?泣き顔?ヘン顔かと思った」ほら。ダメだ。
「意味がわからない」って担当の言葉、決して悪い感想ではないんですよ。わからないは謎があるわけで、謎がないと次に行かないわけですから。漫画はキャラクターが命とかよく言われますけど、これも言いかえればそうですよ、謎があるからこそキャラクターなんです。あ、この謎って出生の秘密とかいう意味じゃないですよ。いや、その謎も含みますけど、大事なのは行動の謎、言動の謎ですよね。「普通はそう来ないだろう」あるいは「そう来たか」ってほうです。もっと言いかえるとね、そのキャラを読者が好きか否かってことです。その説明だとわかりますか?はい、好きってのは把握できないから好きなんですよ、自分の想像の枠の中で治まるような小さなヤツ、好きじゃないでしょう?
で、戻ります。担当が聞く。「なぜ主人公はこんなところで涙を流すの?」「それは彼がものすごく感受性が強いからです。それほど友達思いだってことです」「ああ」「さらに涙にトーンが張ってありますね。これ、緑色なんですよ。200ページほどあとではっきりわかりますが、彼は実は火星人なんです」「え?高校野球モノで火星人?」「そうです。それで彼は今、男ですけど、17歳で女になります。火星人ってみんなそうじゃないですか。だから甲子園に行けるのは高校2年までなんですよ、そこがまたカセになってるわけですけど」「もしかしてこの涙が16粒あるのは16歳を表してるの?」「そうです。火星人は年齢の分しか涙を流さないですからね」「あのさ、その前に火星人って高野連は認めるのか?」「認めないです。ですからそのこともこの涙に書いておきました。涙に反射して、観客席の背広姿の男と白衣を着た男が映ってるでしょう。これ、実はうすうす感づいて調べ始めた高野連の男と科学者なんですよ」
4つ重ねてみました。
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任天堂宮本茂が言ってるそうです。「アイデアというのは複数の問題を一気に解決するものである」
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