海文堂 中井久夫 ゴダール

神戸の海文堂が閉まると聞いて、自分にとってなくなって困る本屋はどこか?と考えた。すぐに地元のブックオフだなと思う。もうずいぶん昔、カミさんと散歩していて、新しい店を作ってるのに出会った。ちょうど看板を建てるところで、そこにはブックオフの文字があった。うれしくて思わず声をあげてしまい、看板の下にいた人を振り向かせた。あとでわかるのだが、その人がオーナーだった。
それから私とカミさんは日参した。カミさんの腹がふくれても行ったし、生まれた子供をおんぶしても行った。ベビーカーでも行った。おそらく自分の生涯で一番本を買った店だろう。いやカミさんもそうだ。そして子供も。買ったのは本だけじゃない。CDも買ったし、DVDも買った。
あの店がなくなったら本当に困るなと思う。そしてその困ることが起きた。この想像をした数日後、閉店することを知ったのだ。海文堂とちょうど同じ9月30日に。
それほど売れなかったのか?と驚いた。手ごろな店の大きさで、棚の回転も速かった。たしかにいっときよりは経営も大変だろう。だけどそれはどこの本屋もブックオフもそうだ。だが閉店するほどなのか。
しかしその想像は違った。オーナーが亡くなったのだ。顔なじみの店員さんが教えてくれた。病を患い、あっという間に亡くなったと言う。私が最後に店に立つオーナーを見たのはいつだったのか。店員さんが「開店して20年だ」と教えてくれたので、あの日、つまり最初にオーナーを見たのは20年前だったことになるのだが……。
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ちなみに私が開店した日に買った本の一冊は『気狂いゴダール』(三一書房 1976)だった。百円の棚で見つけた。最後に買ったのは雑誌のカラオケファン。北島ファミリーの大江裕が表紙のヤツ。あまりにもいい顔で切り抜きたくて買った。60円だった。
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このブログに海文堂の名前は2013年7月1日に登場する。中井久夫について書いた日だ。その中井久夫朝日新聞の夕刊「人生の贈りもの」シリーズに登場した。全5回。昨日が一回目。楽しみだ。

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