出久根達郎 中谷宇吉郎 古書現世

全く新しい歯ブラシが誕生しました。試した歯科衛生士の方8割が、故郷や家族を思い、泣きながら歯を磨きました。

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出久根達郎『日本人の美風』(新潮新書 2011)に「無名の志……中谷宇吉郎と奇妙な宿」という章がある。昭和20年3月、青森から上野へ向かうことが叶わず、途中仕方なく泊まった宿について物理学者中谷が書いたエッセイ「I駅の一夜」を出久根が紹介してるのだが、私も中谷について一度漫画原作で描いたことがあったので、これはすでに知っていた。知っていたにも関わらず今回あらためて心に響いたのは、出久根の筋の立て方がうまいからだろう。簡潔明瞭に伝え終え、出久根は続ける。「こういう人たちが国を支えてきたのではないか、と中谷は言いたかったのではあるまいか」。出久根が結ぶ「こういう人たち」とは、本が好きで、本からものを学ぶ姿勢を持った人たちのことだ。そう、本は良い。空襲警報を気にしながらも、黒布で遮光した電球のもとで、それでも本を読む。「それでも」と書くと何か強い意志があるようだが、そうではない。むしろ淡々と日常に寄ってる行為だろう。ただ敬意がある。本を読むというのは他者への敬意だから、敬意を踏みにじる戦争にさらされていながらも、「それでも」本を読んだということだ。だとすれば「それでも」でなく「だからこそ」を使うべきか。
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朝日の夕刊、シリーズ「人生の贈り物」の中井久夫の1回目にも紹介されてるが、中井の『精神科医がものを書くとき』のなかにもこんな一節がある。「日本は無名な人が偉く、国を支えている」。
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高円寺にあった出久根さんの芳雅堂は本当に良い棚だった。値段も価値を知ったうえでの安さだったし、隣同士に並ぶ本の、その絶妙なくっつき方と離れ方。早稲田の(現在の)古書現世の棚に似てるかもしれない。

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