斉藤卓志『素顔の新美南吉』

でかける。
行き帰りの電車読書は斎藤卓志の『素顔の新美南吉』(風媒社 2013)。女学校教師の新美が折口信夫の講演を聞いた帰り、教え子石川喜久枝の見舞う日記に涙が出そうになる。「(略)なんか笑ひながらしてゐると石川もくつくつとのどを鳴らして笑つた。病気で心がねぢけてをらず、少女らしい純真さでゐることがわかつた」。石川は新美と同じ結核。もうずっと伏せっていた。そしてこの3カ月後の学報で新美は石川の訃報を伝える。
折口信夫の固有名詞よりも石川喜久枝の固有名詞の強さ。70年前に亡くなった石川をもちろん私は知らないが、新美の筆で確実に私は知ってしまった。

素顔の新美南吉―避けられない死を前に

素顔の新美南吉―避けられない死を前に

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日記に「盗汗」という言葉が出てきた。寝汗。ちょっと前に読んだ三浦綾子の『難病日記』(角川書店 2000)にもあった。調べると漢方医学が元らしい。「盗」という字から見てもわかるが、悪い意味で、つまりは病気から来るものを呼ぶようだ。たしかに三浦も新美も闘病中の記述だ。
難病日記 (角川文庫)

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