バカリズム①

バカリズムが好きだ。
頼まれもしないのに勝手に書くほど好きだ。
紙芝居「桃太郎と須藤宏」①
(いつものあの絵を見せながら)
×  ×  ×
桃太郎が、家来になった犬と猿と歩いて行くと今度はキジがやってきました。
「桃太郎さん、桃太郎さん、いったいどちらにお出かけですか?」
「鬼が島に鬼退治に」
「お腰につけてるのはなんですか?」
「日本一のきびだんご」
「一つ下さい。お供します」
×  ×  ×
桃太郎が家来になった犬と猿とキジと歩いて行くと今度はトックリセーターにスラックスの須藤宏、40歳がやってきました。
「桃太郎さん、桃太郎さん、いったいどちらにお出かけですか?」
「鬼が島に鬼退治に」
「お腰につけてるのはなんですか?」
「日本一のきびだんご」
「甘い?あんまり甘過ぎるの、苦手なんだけど」
「そうでもないと思うけど。自然な甘さっていうか」
「じゃあ、20個入りをふた箱」
「すみません。おひとりさま一個になってるんで」
「限定か。オレ、限定に弱いんだよね」
×  ×  ×
桃太郎と犬と猿とキジと須藤宏が鬼が島にむかって歩いて行きます。
♪むかしむかし浦島は♪助けた亀に連れられて♪
桃太郎が振り返りました。
「誰?今、歌ってたの?」
犬と猿とキジが須藤宏を見ました。
桃太郎が言いました。「悪いんだけど、紛らわしいからやめてくれる?」
須藤宏が謝りました。「ふふふ。ごめん」
×  ×  ×
「よし、ここらで休憩にしよう」
桃太郎の言葉に、犬も猿もキジも須藤宏も草の上に腰をおろしました。
そしてさっきもらったきびだんごを食べました。
休憩が終わり、桃太郎が立ちあがったときです。
一口かじって捨ててあるきびだんごを見つけました。
「誰?捨てたの?」
犬、猿、キジが須藤宏を見ました。
須藤宏が言いました。
「だって、かぴかぴで」
須藤宏はさらに言いました。
「誰か食っていいよ。犬でも猿でもキジでも……桃太郎はさすがに食わないか」
×  ×  ×
船に揺られて3日目のことです。
キジが叫びました。
「あった!とうとう見つけたぞ!あれが鬼が島だ!」
「やった!」犬が叫びました。
「やった!」猿が叫びました。
「やった!」桃太郎が叫びました。
「気持ちわりい」須藤宏が嘔吐しました。
×  ×  ×
「それ、やっつけろ!」
桃太郎が叫びました。
むかってくる鬼達。
その鬼に噛みつく犬。
その鬼に引っ掻く猿。
その鬼の目を狙うキジ。
パン!パーン!
ライフルを撃つ須藤宏。
×  ×  ×
「ごめんなさい。許して下さい。この宝物は全部差し上げます」
鬼の総大将が泣きながら言いました。
「泣きゃいいってもんじゃねえぞ」須藤宏が言いました。
「泣いてすむなら警察はいらねえんだよ」須藤宏が言いました。
「しかしよくこんだけ集めてきたな。いったいどうやったの?やっぱいきなり不意打ち?でも金棒って隠しにくいじゃん、どこに隠すの?」須藤宏が言いました。
×  ×  ×
宝物を積んだ荷車を押しながら、桃太郎と犬と猿とキジと須藤宏が帰って来ました。
「モモさん、このお宝、どうするの?」
須藤宏が言いました。
「もちろん元の持ち主に返すんだよ」
「マジで?」
「マジ」
「経費は引かないの?」
「引かない」
「ふーん」
須藤宏は一つ大きくため息をつくと、「おつかれさんした」と去って行きました。
×  ×  ×
一カ月後、桃太郎のところへ須藤宏から連絡がありました。
「モモさん、あのお宝どうなった?」
「だから持ち主に返したよ」
「全部?」
「全部」
「だって転居先不明とかあるじゃん」
「なかったよ」
「マジで?」
「マジで」
「ふーん」
「ちょうどよかった。実は明日、お疲れさんの慰労会を開くんだよ。犬も猿もキジも来るから遊びに来ないか」
「どうせ、きびだんごでしょ」
「いや、いろいろ。メインは鍋。寿司もとるよ」
「そうなんだ。わっかりました。行きますよ。みんなにも会いたいし。土産はシュークリームかなにかでいいっすか」
「そんな気を使わないでいいよ」
×  ×  ×
パーティ当日。
須藤宏は来ませんでした。
そんなことだろうなあ、と桃太郎は思いました。
おわり
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