ダイアン

ダイアンが好きだ。
頼まれてもいないのに勝手に書くほど好きだ。
×  ×  ×
津田「センセ、手術、どうだったでしょうか」
西澤「はい、無事終りましたよ、大成功です」
津田「ありがとうございます!」
西澤「ただもう一度手術してもいいかなって。それもありなんかなって」
津田「もう一度手術?」
西澤「こちらの書類に同意のサインをしてもらえますか」
津田「ちょっと待って下さいよ」
西澤「なんだったら名前だけでなく『人間だもの』とか書いてもいいですよ、『人間だもの。津田篤宏』『風林火山 津田篤宏』『ぼくドラえもん津田篤宏』」
津田「そんなん書きませんよ」
西澤「あとですね、もう一名、御親族の方のサインも欲しいんですよ。廊下にいらした方、ちんちくりんって感じの、あの方が奥さんですよね」
津田「ちんちくりん?」
西澤「あのちんちくりんな奥さんの、ちんちくりんなサインも欲しいんです。『ちんちくりん 津田ちんちく』」
津田「センセ、どう言うことです?手術は失敗したんですか?」
西澤「だから手術は成功しましたよ。はは、それはさっき言ったじゃん」
津田「だったらどうして?」
西澤「津田さんは日本語読めますか?名前は書けるんでしょ?読むの難しい?ルビ振りましょか?」
津田「読めますよ!」
西澤「だったらここ読みましょか(同意書を差し出す)」
津田「(読んで)梅干しのタネをすみやかに取り出す手術」
西澤「はい。読めたね、じゃあ次は書く番。名前書きましょ、『家族割なら三日無料、津田篤宏』」
津田「それはもういいです!ていうか三日?」
西澤「手術はいつにしますか?このあとちゃっちゃっとやっちゃいますか」
西澤「だからどういう意味なんです?梅干しを取り出すって」
西澤「読めても理解力はイマイチかな。だいたい梅干しじゃなくて梅干しのタネですよ」
西澤「もしかして手術のときに梅干しのタネが入ったの?そうなの?今、この時点、この瞬間に私のお腹の中に梅干しのタネがあるの?」
西澤「(まぶしそうに)ふふ。ここ西日めっちゃ入る」
津田「関係ない!」
西澤「カーテンが日に焼けるわけですね」
津田「手術のミスで、カンシを忘れた、ガーゼを忘れたとかたまに新聞出るけど、梅干しのタネってどういうことなの?ていうかなんでそんなことになったの?」
西澤「ああ、そこが知りたかったんですか、ふふ、津田さん相当変わってる」
津田「普通です!めっちゃ普通です!」
西澤「ボクね、すっごい緊張しいやないですか」
津田「全然知りませんけど、ていうかそんなふうには見えませんけど」
西澤「そんで昔ね、田舎のおばあちゃんに言われたんですよ、そういうときは梅干し食べたらええで。酸っぱいとな、そっちに気をとられるから、緊張しないですむでえって」
津田「はあ、そういうことはあるかもしれないですけどね」
西澤「だから津田さんの手術を成功させたくてね、緊張で失敗するのダメでしょう、それで梅干しを口に入れて手術に臨んだわけです」
津田「はあ、ありがとうございます」
西澤「で、いつものように舐めながら手術してたら、津田さんの内臓がね、胃とか腸とかがね、なんか気色悪い感じでね、僕のことを睨んできたんですよ」
津田「睨んでる?どういう意味です?」
西澤「だからあくまで感じですよ。はは、ほんまに睨むわけはないからね。でもメンチ切ってるっていうか、ガン飛ばしてるっていうか。ボクね、そういうの嫌なんですよ、町のチンピラは大嫌いなんです。だからね、おお、そっちがその気ならやったろうやないかいって、思わず梅干しの、もうタネだけになってたんですけどね、そいつをペッ!て」
津田「えー!」
西澤「ほしたらね、婦長の岡本さんが、見てたような気がしたんですよ」
津田「そりゃ当り前でしょ、手術してるんですから」
西澤「で、やばい、見られた!証拠隠滅しないとって、もう急いで縫いました。津田さんのお腹を、ダダダーと」
津田「えー!えー!」
西澤「それでね。手術は成功したんですけどね、さっきネットで調べたら、やっぱりお腹の中に梅干しのタネがあるのはまずいみたいなんですよ。ロシアの学者が言ってるんです。まじ、まずいって、そんで、手術しようかなって」
津田「センセ、それだったらまず謝るのが最初でしょ!それからでしょ!手術の話は」
西澤「ボクって謝るの嫌いじゃないですか」
津田「知らん!ていうか謝れ!」
西澤「ふふふ。ほんまにここ西日きつい」
津田「あれ?センセ、手術のときってマスクするんじゃないんですか」
西澤「だから、ボクってマスクって苦手じゃないですか」
津田「だから知らんて!」
西澤「ふふ、不思議ですね、梅干しの話してたら、ほんと、口の中酸っぱくなってくる」
津田「気づき)センセ、頭につけるネットみたないやつ、あれはつけてたんですよね」
西澤「津田さん、よく気がつきました。あれもボクようしませんよ」
津田「それもまずいでしょ!髪の毛落ちるでしょう」
西澤「そうなんですよ。もう僕もいい年ですからね、そこそこ抜けますよ。手術中もそりゃぱらぱら落ちますよ」
津田「まずいでしょ!それまずいでしょ!」
西澤「だからね。手術でなければ、コロコロ使いますよ、ボクね、テレビ見るときは右手にリモコン、左手にコロコロですから」
津田「だから知らん!ていうか知りたくもない!」
西澤「でも手術ではコロコロ使えないでしょう。髪の毛、お腹の中に落ちても、内臓、べとべとですからね」
津田「ネット、調べなかったんですか!髪の毛をお腹の中に置いてきたらまずいって、ロシアの学者はなんも言うてないんですか!」
西澤「髪の毛?何も書いてなかったな。植物学者だからと違いますか?」
津田「とれ!手術でタネと髪の毛とれ!」
西澤「タネはとりますけど、髪の毛はコロコロで?」
津田「コロコロちゃう!ピンセットでとれ!」
西澤「婦長の岡本さんの髪の毛もですか?」
津田「婦長も頭のネットみたいのしてないんか!」
西澤「彼女ね、なにが気に食わないのか、ときどきイーってなって髪かきむしるんですよ、だからね茶色のんが入ってたらそれは岡本さんのです」
津田「とれ!茶髪もとれ!」
西澤「相沢さんのポテチは?彼女隠れてよく食べてるから、あの子、歯並び悪いでしょ、完全にお腹の中、飛んでますよ」
津田「とれ!ポテチもとれ!」
西澤「相沢さんの息子さんのミニカーは?手術室遊びに来て、津田さんの大腸んとこ、高速道路に見立てて遊んでたから、フェラーリですけど」
津田「とれ!フェラーリとれ!全部とれ!」
西澤「全部?内臓もですね」
津田「内臓はダメ」
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