石井忠②

石井忠。『漂流物の博物誌』。
本に切り抜きがいくつか挟んである。その一枚。83年12月24日の読売の夕刊。
遠州灘沖から手紙入り瓶を放流した小学生の記事。4年後ハワイ、カウアイ島に到着。返事が来た。
瓶ではないが、去年、花の種を拾った。家から仕事場へ向かういつもの道で、お年玉袋より一回り大きい良く見る封筒形のあれ。ひもがついていて、その先には割れたゴム風船らしきものがくちゃりと残ってた。「もしかして?」と裏面を見ると『山梨県人権の花運動』と印刷された紙が張られ、甲斐市の小学校と4年生の女の子の名前が。おおやっぱり。学校のHPを調べると、数日前に校庭で風船を飛ばしたこと、そしてすでに到着の報告をいただいています、とある。あ。報告者はすぐ隣町の人だべ。そうか。このあたりで少なくとも二つは一緒に落ちたのか。小学校からここまで約100キロ弱。富士山を見て丹沢を見て、ここで力尽きる。
「みんなとなかよくしましょう」という彼女の自筆メッセージに大いに賛同したので、私もピカチュウ官製葉書で学校宛に手紙を出した。するとすぐに彼女からお礼の返事が届いた。学校が彼女に渡してくれたらしい。「さっそく種を植えました」と今度は彼女宛てに手紙を書いた。
だが残念なことに芽は出なかった。なでしこ。咲いたら連絡するつもりだったのに。今度はゴンベの絵葉書で。