中井貴一

長男なのに、名前に「二」がつく知り合いがいる。浩二、貞二。これって不思議だった。直接本人に聞いたこともあるがわからないと言う。もしかしたら民俗学的な意味があるのかしらって思ってた。ほしたらこんな文章に出くわした。
「日本映画決算座談会がすんだあとの、茶飲み話の席だった。僕が近頃の日本映画男優諸君は何故誰もかれも芸名の終わりを「二」で結びたがるんでしょうね、と言いだした。浩二、啓二、雄二、英二、謙二、貞二、まだいるぜ、成程多いね、と皆で首をひねったが、こういう流行の原因は誰にも判るわけのものじゃない。すると一声、「うん、ありゃね、二枚目のつもりなんだよ」
ふふふ。面白いでしょう。キネマ旬報、1953年12月上旬号の「編集室」の文章。「荻」と署名があるから荻昌弘ですかね。
佐田啓二ウィキペディアで調べた。ここにも面白い記事が。「学生時代、松竹の人気俳優佐野周二の家に下宿していた縁で、1946年、松竹大船撮影所に入社する。芸名は、「佐野周二」の姓名から一文字ずつ譲り受けて名付けられた」。てことは「佐」と「二」をもらったのね。佐田啓二は長男なのに。「周」でもよかったのにね。あるいは一つもらうんでもいいべ。
で、佐野周二。また「二」だよ。今度は佐野をウィキで調べる。本名は正三郎だ。てことは三男か。うーん。
一つ考えられるのは、男優は「次男」のイメージが良かったのかもしれない。長男ではなくて次男。だから「二」。
さて、先に挙げた私の知り合いですが、日本映画男優諸君とは違います。成瀬巳喜男と仕事したこともないし、その世代でもありません。そうではなくて彼らの親が、その男優諸君をスクリーンで見ていた世代です。つまりこの場合の「二」は、ていうか「貞二」や「浩二」は、有名人から取ったのかもしれません。
ちなみに佐田啓二の息子中井貴一は長男だから「一」でなんら問題はない。そんでこの名前をつけたのは小津安二郎。あ、「二」じゃん!はいはい、大丈夫、これも次男で問題ない。ていうか小津は男優じゃない。ていうか「問題」っていう言い方が問題だ。うわ。今、小津が貴一とつけた理由がどこかに載ってないかしら?と思って調べてたら、姉の中井貴恵の名前は(これは芸名)木下恵介がつけたとある。そういえば聞いたことあったかも。しかし。うーん。
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余談ですが、キネ旬を買ったのは水木洋子の『山の音』のシナリオが採録されてたため。一年ほど前?池袋の往来座の店頭で100円だった。いやあ、すげえ面白かった。あわてて川端の『山の音』も買っちゃったよ。こちらも面白かったよ。
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中井貴一」のNHK『サラメシ』は好きだ。
きくりんの中井貴一も好きだ。
しかしどうしてそっくりさんって幸が薄い感じになるんでしょうね。本物の方が幸が薄いってのはないよね。当り前か。