うすた京介

歌丸「山田くん、昇太さんに座布団一枚」
山田「はーい、ただいま」
歌丸「あと、木久扇さんを高速で回転させると、いつ座布団が発火するか調べて」
山田「はーい、ただいま」
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町田にあった二の橋書店に行ってたころの話。そこから5分ぐらいのところに古道具屋があった。引っ越しのときの処分品やゴミ捨て場から拾って来たようなものを売ってる小さな店。二の橋に行くと必ず寄ってたんだけど、その日も友達の安里(姓ではなくて名前、女子ではなく男子)と流れた。それぞれ物色してたら安里がメガネを見つけた。顔にかける。「悪くないんじゃない?」と言うと「度が入ってるなあ」と言う。その会話を聞いてた店のおっさんが言った。「あった」。手を差し出すおっさんに安里がメガネを渡すと、そのままおっさんは黙って顔にかけた。
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小島政二郎の『詩人芭蕉』(彌生書房 1980)の挟み込みに新刊・重版案内があった。『琴はしずかに 八木重吉の妻として』(吉野登美子)。その隣に『わが胸の底ひに 吉野秀雄の妻として』(吉野登美子)がある。え?どっちも吉野登美子だ。編集のミス?と思って調べたら、うわ、びっくりした!これでいいんじゃん。調べると、八木と死別したあと、再婚したんですね。勉強不足で申し訳ないです。
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実は上の話題は「うわ、びっくりした」で書くつもりではなかった。吉野登美子は「妻として」書いたわけだけど、そりゃもういろんなポジションの人が著者になれますよね、って話をしたかった。ある人物について、息子の立場から書く。娘から書く。妻から書く。あるいは父が子供について書く。母が娘について書く。兄が弟について書く。妹が姉について書く。伯父が書く。叔母が書く。従兄が書く。親友が書く。同級生が書く。仕事の仲間が書く。戦友が書く。先輩が書く。後輩が書く。主治医が書く。運転手が書く。元恋人が書く。愛人が書く。義兄弟が書く。と、いろいろあるんですけど、隣の家の人が書いた本ってありますか?『石原裕次郎という男 隣の家から聞こえた兄弟喧嘩』とか『美しい空の下、向かいの家から覗き見たひばりちゃん』とか、『うすた京介 聞きたかったピューの音』とか。そういうやつ。あったら教えて下さい。