手塚治虫

「姉ちゃん、ボクだよ」「ボクだよ」「ボクだよ」
「トン吉?チン太?カン平?」
サリーちゃんの親友のよっちゃん、ボクボクボク詐欺に引っ掛かる!
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中学のとき、手塚治虫のサイン会に行ったことがある。銀座のソニープラザ。銀座はこれが初めてだったかもしれない。行ったのは同級生のキュードンと。整理券をもらって手塚先生の到着を待った。開始時間になり、司会者が言う。「申し訳ありません。予定時間になりましたが、先生はまだお見えになっていません。もうしばらくお待ちください」もちろんもうしばらく待った。しばらく待って、もうしばらく待って、さらにもうしばらく待った。司会者が何度目かのマイクを握る。またまたまたもうしばらく待てと言うのかと思ったら「先生はどうしても仕事が終わらず、来られなくなりました」と頭を下げた。
何も書いてない色紙を渡され、その裏に、自分の住所氏名と、描いてほしいキャラクターを書けと言う。私はジャングル大帝にした。キュードンは鉄腕アトムだったか?ひと月ほどして、パンジャとレオが並んで走る、それは丁寧に彩色された色紙が郵送されて来た。うれしかった。
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あのときジャングル大帝でなく「こまわりくん」と書いたら、手塚先生はなにを描いただろう?シャレだと笑って、八丈島キョンのポーズを描いてくれただろうか?