ふきのとう 白い冬

木田元『新人生論ノート』(集英社新書 2005)。
木田は50歳になったころ急性膵炎になって「死ぬかもしれない」と思う。痛みに耐えながらも頭にはいろんな考えが浮かぶ。そのひとつが「あの歌、良い歌だったのにとうとう覚えないでしまったな」という、いまわの際らしくない想念だった。その歌は男性デユオ「ふきのとう」の「白い冬」。
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このとき木田は膵炎ではなく、いつもの胃痙攣だと思ったらしい。だから病院に着くとすぐに「モルヒネを打って下さい」と頼んだ。だがそれがまずかった。救急車で乗りつけてそう頼むのは麻薬中毒者の常套手段なのだ。だから医者は木田にモルヒネを打たなかった……。
緊急医療現場のドラマを書いている脚本家のみなさん、これ、使えませんか?それともこれってよくあるネタなんですか?そうだったらごめんなさいね。私、この手のドラマを見たことないんで。
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木田はいま85歳。酒場で「白い冬」を歌っているのだろうか?